働き方改革(法改正事項)
働き方改革とは、雇用形態による待遇の不合理な格差や長時間労働の是正などにより、誰もが健やかに働ける”働きやすい環境”を作り、生産性を向上させようという取り組みのことです。
時間外労働時間規制(残業時間)などの働き方改革関連法が順次施行される中、アルバイトや派遣社員など非正規による待遇の差を禁止する「同一賃金同一労働」も施行されました。
また労働時間ではなく、成果を重視していく「ジョブ型雇用」や「テレワークの導入」など、現在の日本では幅広く働き方改革が進められています。
企業側のメリット
企業は、労働時間だけで仕事の成果を判断するのではなく、休暇を取得しながら生産性を向上させ、イノベーションや労働者に最適な労働環境を作り出すことで「働き方改革」に貢献している企業だということを示すことができます。また有給休暇を取得しやすくすることで、社員を大切にする企業と内外にアピールでき、採用面でもメリットを得られます。
従業員側のメリット
社員のメリットとしては、仕事のオンとオフを区別し、仕事とプライベートをともに充実させることができます。
家族と過ごす時間や趣味の時間が確保できることで私生活を充実させ、仕事のパフォーマンスを高める好循環を生み出せます。
働き方改革の取り組み8つの事例
主に8つの施策が注目されており、企業・従業員ともに働き方を見直すきっかけとしなければなりません。
1、年5日以上の有給休暇取得義務
週5日の常勤勤務など、年10日以上の有給休暇が発生している労働者に対して、企業は年5日の有給休暇を取得させることが義務づけられました。遂行しなかった場合は、刑事処罰の対象となります。
2、時間外労働の上限規制(罰則あり)
労働者の働き過ぎを防ぐため、時間外労働が原則月45時間かつ年360時間以内となります。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、月100時間未満、年720時間以内にするなどの上限が設けられ、これを超えると刑事罰の対象となります。
3、勤務時間インターバル制度の導入
1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保することが努力義務とされます。
4、同一労働・同一賃金の原則
正規・非正規の不合理な待遇差をなくすため「同一労働・同一賃金」が適用されています。働く人のモチベーションを上げるためにも経済格差をつけることは禁止され、格差を減らし、より働きやすい労働環境を整えなければなりません。
5、月60時間以上の時間外労働に割増賃金率の引き上げ
月の時間外労働が60時間を超えた際は、割増賃金の割増率50%以上に上げる制度が適用されています(中小企業は2023年施行)。
6、フレックスタイム制の柔軟性拡大
最大1カ月単位でしか適用できなかったフレックスタイム制が、2カ月・3カ月単位での適用が可能です。年度末の繁忙期や夏の繁忙期といった繁忙期にシーズンがある場合は、3カ月の中で休みの調整をする事ができるため、企業としてのメリットが大きい制度です。
7、高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働)の創設
年収1,075万円以上かつ一定の専門知識を持った職種の労働者を対象に、本人の同意等を前提に、労働時間規制や割増賃金支払の対象外とする制度です。これはアナリスト業務や金融商品の開発業務、研究開発業務、公認会計士や弁護士などの士業などに適用されます。しかし、高度な専門を要する医師には適用されません。
8、産業医・産業保健機能と長時間労働者に対する面接指導等時間の強化
労働時間の把握は、大企業・中小企業にとどまらず既に実行されなければいけない義務のひとつです。産業医やカウンセラーを通して客観的に労働時間を把握し、事業主も客観的に従業員の労働時間を把握する義務が課せられています。健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間に関する状況が客観的な方法、その他適切な方法で把握されるよう義務づけられています。また、産業医 ・産業保健機能と長時間労働者に対する面接指導等、長時間労働者に対する面接指導等も強化されています。
中小企業では2023年4月から月60時間超の残業の割増賃金率が引き上げに
中小企業でも2021年4月施行の「産業医の機能と長時間労働者に対する面接指導等時間の強化」と、2023年4月から対象となる「割増賃金率の中小企業猶予措置廃止」を除く、すべての働き方関連法案が施行されています。
中でも時間外労働の罰則付き上限規制は、中小企業への影響が大きいため、人事制度改革を常に点検し、改善を行う必要があります。
中小企業とは?
大企業と中小企業では働き方改革の法改正事項の施行時期や要件も変わってきます。下記が中小企業の諸要件です。こちらの表以外は大企業となります。
業種 | 資本金の額または 出資の総額 |
常時使用する 労働者数 |
|
---|---|---|---|
小売業 | 5,000万円以下 | または | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | |
その他 (製造業、建設業、運輸業、その他) |
3億円以下 |
300人以下
|
働き改革を行ううえでのポイント
まずは、ガイドラインに従って、抜け漏れがないか確認していきましょう。そして数年先まで見据えてのプランを構築しましょう。最初は費用も当然掛かります。働き方改革を促進するためには、労力と時間が必要です。資金が少ない中小企業は、地方自治団体が支給する助成金を活用しましょう。
中小企業が労働時間等の改善を含めた職場意識の改善計画を作成し、この計画に基づく措置を効率的に実施した中小企業の事業主に支給される助成金もあります。働き方改革推進支援助成金、業務改善助成金、キャリアアップ助成金などを活用しましょう。また、社員の労働状況等の管理のために、労務管理システムツールを活用することで、効率的に業務を進めることができます。
罰則も…
働き方改革では、今までの「限度基準告示」から「罰則付き」に引き上げられました。時間外労働の上限規制に違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。時代に応じて、働き方が見直す働き方改革をしっかりと理解し、ミスのないようにすることが必要です。
助成金の活用や法改正事項への対応は難しいところもあります。時間の節約、ミスのない業務遂行のためにも社労士を活用ください。