株の配当がある75歳以上の方へ。確定申告をしなくても、医療費の負担に反映される時代になります
10月16日の読売新聞で、こんなニュースが報じられていました。厚生労働省は、75歳以上の後期高齢者の金融所得を、医療費の窓口負担や保険料の算定に反映させる新しい仕組みを、2029年(令和11年)8月から始める方針を固めたそうです。株式の配当や譲渡益などを把握し、支払い能力に応じた負担に改めるもので、2030年(令和12年)8月から完全実施するとのことです。同じ日に開かれる社会保障審議会の医療保険部会で示されると報じられています。
75歳以上の方の窓口負担は、原則1割で、所得が多い方は2割、現役並みの所得がある方は3割になります。この「所得」は、市町村が持っている住民税の課税情報をもとに判定されています。
ところが、株式の配当などの金融所得は、源泉徴収で税金の手続きが終わるため、確定申告をするかどうかを自分で選べます。確定申告をしなければ、市町村は、その所得を把握することができません。そのため、同じ収入があっても、確定申告をしたかどうかで、窓口負担や保険料が変わってしまうのです。
厚生労働省の資料に、わかりやすい例が載っていました。夫婦ともに後期高齢者で、夫の年金が230万円、株式の配当が50万円、妻の基礎年金が83万円という世帯です。夫が確定申告をした場合は、窓口負担が2割、保険料は年169,978円になります。ところが、確定申告をしなかった場合は、窓口負担が1割、保険料は年118,928円になるそうです。収入は同じなのに、保険料だけで年5万円以上の差が出ることになります。
この不公平をなくすため、新しい仕組みでは、確定申告の有無にかかわらず、金融所得も含めて窓口負担の割合や保険料を判定します。金融所得の把握には、銀行や証券会社などの金融機関が税務署に提出している「法定調書」を活用します。報道によると、2029年1月から、金融機関が法定調書を各都道府県の後期高齢者医療広域連合にオンラインで提出することが義務化されるそうです。なお、厚生労働省の資料では、本人の事務負担が増えることはないとされています。また、非課税のNISA口座で得た配当や譲渡益は対象外です。
この仕組みは、5月に成立した改正健康保険法に盛り込まれていたものです。法律は令和8年6月5日に公布されていて、公布から5年以内に施行するとされていました。今回、その開始時期が具体的になったことになります。
私は、確定申告をしたかどうかで負担が変わるという今の仕組みは、やはり不公平だと思っていました。きちんと申告している方ほど負担が重くなるのは、おかしな話です。その意味で、今回の見直しは、自然な流れではないでしょうか。
一方で、これまで1割負担だった方の中には、2割になる方も出てくるはずです。厚生労働省の資料では、後期高齢者の利子や配当の所得は増えていて、株式を持っている70歳代以上の方の上場株式の保有額は、1人当たり1,600万円程度になるそうです。株の配当で生活費を補っているご高齢の方は、意外と多いのかもしれません・・・。
始まるのは2029年8月と、まだ少し先です。ただ、ご両親が株式の配当を受け取っているという方は、今のうちに、窓口負担や保険料がどう変わるのか、一度ご家族で話してみてはいかがでしょうか。今後、詳しい内容が決まりましたら、このブログでもお伝えします。



