労災事故があり、それは片が付いたのですがその後その社員が・・・
以下のようなご質問がありました。
Q、労災事故がありまして、症状固定で労災一時金を受け取ってその件は終了したのですが、少し後遺症が残っており、元の業務はできずに会社側で事務や営業の仕事を用意しましたが、拒否されています。
それの影響か、不適切な発言(仕事をしない、会社の悪いことを言いまくる・・・)も多く、お金を請求するような言動を繰り返しています。
会社側は、ずっと誠実に対応してきており、現在は、健康保険の休業補償?の手続き中です。
以上のことから、その社員を解雇したいと考えています。
ところが、弁護士より「労災についての損害賠償を請求することを受任したので、本人と直接話をしないように」との手紙が来ました。
予定通り、解雇していいのか、それとも、先方の動きを待つべきなのか、それとも、相手の弁護士に相談すべきなのかを教えていただけますでしょうか。
よろしくお願いします。
A、まず、労災を受けて、健康保険の休業補償?という点があり得ないのでちょっと整理をしたいのですが、
この「健康保険の休業補償?」というのは、傷病手当金の請求ではないかと思われますが、傷病手当金は、労働者が業務外の事由による病気やけがの療養のために休業せざるを得ない場合に請求できるもので、業務上の負傷であるとして労災給付を受けたA社員が同じ負傷について、今度は業務外の事由によるとして傷病手当金の請求をできるとは考えにくいです。会社としても、A社員の不正な傷病手当金の受給に加担する結果とならないように、請求をする健康保険側によく確認された方が良いのではないかと思います。
不正手続きにもなりかねません。
また、労災事故についての損害賠償請求につき受任した旨の通知が弁護士から来たとのことですが、(事故の態様等の詳細がわからないので推測になりますが)会社に安全配慮義務違反があったなどとして、民事の損害賠償請求をしてきているものと考えられます。
その問題については、当該弁護士が代理人となるので、A社員本人と直接話をしないようにということのようですが、A社員が就労可能な状態なのであれば事務や営業としての就労を求めたり、就労に応じないなら指導をしたり、就業規則に基づいて懲戒処分に付したりという関係は、それとは別問題ですので、これらについて話をしてはいけないということはないはずです。但し、A社員が懲戒処分や解雇問題についても弁護士に交渉を依頼するということであれば、その段階からは弁護士と協議・交渉をするということになります。
ご相談の本題ですが、事故によりA社員が負傷したことについての損害賠償請求とは別の問題として、A社員による就労拒否の問題があります。指を切断し後遺症が残っていても、A社員が行うことが十分に可能な事務の仕事や営業の仕事があるのであれば、A社員をそのような仕事の担当に配置転換する辞令を正式に出すべきと思料します。そのうえで、A社員が新しい配属先での仕事をしないのであれば、業務上の指導をしたり、書面での厳重注意をしたり、始末書を書かせたり、就業規則に基づいて初めは軽度の懲戒処分に処するなどの段階を踏んで、最後の最後に解雇通告をするということになります。
いくら働かないA社員の方に非があるとしても、段階的な処分を経ずにいきなり解雇通告をしたのでは、裁判で争われた場合、改善の機会を十分に与えておらず社会的相当性を欠く解雇通告で解雇権を濫用したものとして法的には無効と裁判所に判断されてしまう可能性が高いです。また、口頭の注意だけでいつ誰がどのような指導や注意をしてA社員がどのような対応をしたのか、後から言った言わないの話になって良くわからなくなってしまわないように、辞令や指導内容や、Aに書かせた始末書や、会社の懲戒処分などできるだけ書面で残しておくことが望ましいです。
A社員が弁護士をたてて事故についての損害賠償請求をしてきていることもあり、そのことへの対応と併せて、A社員を解雇するまでの会社側のとるべき措置についても、会社は会社の代理人となってくれる弁護士を探して併せて相談することも検討されてはどうでしょうか。
どうしようもない状態ですと、専門家に投げた方が心的にもダメージは少ないような気はします。
そのために弁護士や社労士などの専門家がいますので。